■みんな知らない太陽が沈む位置
東京にいた時に苦労してダイヤモンド富士を撮った。 伊達に来たらダイヤモンド昭和新山を撮ろうと意気込んでいた。コテージから見る夕陽は素晴らしい自然の贈り物だが、ここから見る太陽は有珠山の右側に沈んで行く。もっと壮瞥の方に行けば、昭和新山に沈むのではないかと思い、そちらに行ってみる。だが、どうも位置が違う。
先ずは歩く生き字引と言われる伊達信金のR理事長に電話してみた。こんな下らない電話をして怒られるかと心配したが、丁度昼食後で機嫌も良かったのが幸いして、親切に太陽の沈む方向に付いて解説してくれた。そこに行ってみたが、位置は良いのだが、有珠山が邪魔して太陽が見えない。そこで、タクシー会社のMさんに聞いてみた。
タクシーならこの辺りを走り回っているから分るだろうと思ったからだ。Mさんは『そんなこと気にしたことがないなー』と言う。そこで、Mさんの親戚のS農園に電話で聞いてもらう。Sさんも『分らないなー』という返事だ。
私の写真の師匠のチロルのマスターにも聞いてみた。さすがに師匠は言うことが厳しい。
『沈む太陽は駄目だが、朝日なら昭和新山の傍の橋の辺りではないか?早朝の4時に自分で行って確認しろ』と言う。『苦労しないで良い写真は撮れない』とも言う。

無駄に走り回るより、現代は情報の時代だから分る人に聞いた方がいいに決まっているというのが私の考えだ。そこで洞爺湖の北側にあるW豆腐店に行って聞いてみた。
すると、『ここから見る太陽は洞爺村役場の方向に沈む。昇る太陽は山の陰からである』と言う。 だから、そこまで西に行くと行き過ぎである。さすがに豆腐屋さんは朝が早いので日の 出を知っていた。
色々と調査した結果、『太陽は昭和新山には沈まない』ということが分かった。

そこで、仕方ないので洞爺湖にある中島の間に沈む太陽にテーマを変更した。
この場所を探すのも苦労した。伊達信金のR理事長はさすがに気配り目配りの人だけあって、夕陽が中島に沈む場所を『発電所のあたりだ』と教えてくれた。
実際にはそこから500メートルくらい先だったが、かなり正確な推測であった。そして、8月20日午後6時10分に撮影したのが、この写真である。道路から崖を下り、藪の中を進み、やっとカメラが構えられるくらいの場所を湖畔に見付けた。薮蚊に刺されながらの撮影であった。
でも、テーマを決めるのがいい加減だから、変更するのもあまり気にならないというカメラマンでは大した作品は期待できないなー。
最近、私の撮影した写真がトーヤレイクヒルGCのHPに採用されたのでご覧下さい。
トーヤレイクヒルゴルフ倶楽部
(おまけの話)
私も現役の時は太陽なんか気にしたことがない。
太陽が昇る時はまだ寝ていた。沈む時はまだ仕事をしていた。それが引退して太陽の沈む写真など撮るほどに暇が出来ると、『もっと自然を感じて、自然の恵みに感謝しなければいけない』なんて勝手なことを言うようになる。
伊達の人には『こんなに自然が豊富なところに住んでいるのだから、いつも車にばかり乗っていないで、たまには上を向いて歩いたらどうですか?』なんて言っている私だ。
人は立場が変わると考えも変わる。だから、『絶対にそう思う』なんて力まない方が身の為であるということを、この年になって悟った。遅過ぎたかなー。