■もうひとつの薬師寺展
奈良の薬師寺にはあまりにも有名であるが、薬師寺には全くと言っていいほど知られていないが、薬師寺東京別院というのがある。 場所は東五反田の池田山にある。
池田山は高級住宅街で、美智子妃殿下の実家の正田邸があった場所としても知られている。
正田邸は保存運動があったが、東京都に受け入れられず、いまは美智子妃殿下に因んで『ねむの木の庭』として公園になっている。
ところで薬師寺東京別院であるが、いま開催中の『国宝・薬師寺展』に合わせて、ここに国の重要文化財となっている仏像の内の数体が奈良からやって来て展示されている。
その仏像を仏像彫刻教室の榎本先生の誘いで生徒達10名が見学することになった。薬師寺に関係の深い生徒がいたので、拝観料は無料となった。
その上に、見学の後には3階で抹茶とお菓子も出た。
コネというのはありがたいものだ。こんな小さなことでも嬉しいのだから社会からコネが無くならないのだろうと思う。

仏像を間近から拝見して、坊さんの説明を受ける。
この坊さんは話が上手だ。人を笑わせるツボを心得ている。
その中でいい話を聞いた。『がらんどう』についてである。
我々はよく『あの店に行ったらがらんとしていた』とか、『中はがらんどうだったよ』なんて言い方をする。
この『がらんどう』の意味であるが、本来はお寺用語で、『お寺の敷地の中に建っている本堂とか五重塔などの施設全体を指す言葉で、それを伽藍堂と言った。そしてそこから発展して、本殿の中の広い広間が何も無くて空間があることを指してがらんどうと言うようになった』とのことであった。
我々はなにげなく使っていた言葉だが、そういう意味だったのかー。
(おまけの話)
この東京別院は元は山本霞月さんという人のお宅だったそうである。
その人は『香道の家元』であって、実家は岡山の山林王だそうだ。この東京別院は昭和50年にその方から寄贈されたものだそうだ。
説明役の坊さんの話では、この方は伊達市に無関係ではなかったので驚く。
実は伊達市に縁の深い作家の宮尾登美子さんの作品の中の『伽羅の香』という本がこの山本霞月さんのことを書いた本だそうだ。早速、買って読んでみようと思う。
それで、なんとなく親しみを覚えて、ズーズーしくもお願い事をしてみた。
『私は仏像彫刻をしているのですが、今日それを持参しているので、私の彫った仏像を薬師寺の重要文化財の仏像の前に置いて写真を撮ってもいいですか?』。多分、断られるだろうと思ったら、意外にもOKが出た。
それで撮影したのだこの写真である。

こんな写真は日本でも私以外は誰も持っていないだろうと思う。