■10年目のパスポートの書き換え
私が初めてパスポートを手にしたのは、今から44年前の3月だった。当時のパスポートは今よりももっと大きく、威厳があったように覚えている。 まだ成田空港は無かったので、そのパスポートを持って勇んで羽田空港からニューヨークに出発した。
今のように渡航が自由化されていなかったので、外国へ行くにはそれなりの理由がなければパスポートの発行さえされなかった。また、目的地の国もビザが無ければ入ることが出来なかった。
よく年寄りは『昔は良かった』なんて言うが、外国旅行に関しては今の方がずっと良くなった。

パスポートの期限が6月で切れるので、女房と一緒に立川まで書き換えの申請に行った。申請には顔写真、本人確認用に運転免許証、葉書、古いパスポートを持参する。
最近は住民票は不要となった。
でも、不要なのは住民基本台帳システムに加入している市町村に限る。ここに来たのは10年前である。
もう10年も経ってしまった。
今回も10年間のパスポートを申請するが、もうこれが最後だろうと思う。

今までに何回の書き換えをしただろう。
22歳で初めてアメリカに行って以来、今年の2月のハワイまでに何回外国に行っただろうかと考えてみた。
思い出せる範囲でも60回は行っている。
まだまだ行ったことのない国は多い。
でも、もう長時間の飛行機に乗るのは嫌になったし、時差ボケも辛いし、外国の食事も受付け難くなってしまった。
この新しいパスポートで何回外国に行くことになるのか?
その前にあちらからお迎えが来てしまうのか?
最近は外国旅行より温泉の方が好きになっている私に自分で驚いている。
(おまけの話)
最近は円とドルの交換レートは100円台で上下している。
私が最初に円をドルに換えた時は360円であった。
しかも日本政府はドルがあまり無いので、1人当りの国外持ち出し額を500ドルと制限していた。
これは日本円で18万円であるから当時の物価から考えると結構な金額のように思えるが、実はアメリカに行って分ったが、購買力換算だと現在の1ドルとあまり変わらず、5万円くらいの価値しか無かった。
この500ドルで現地での宿泊、食事、移動を行うのであるから、殆ど無理な金額であった。
そこで日本で闇ドルを買うことになるが、それは400円を出さないと1ドルが買えなかったという時代であった。
当時、我が家の知り合いにアメリカ人牧師のランキンさんという人がいた。
その牧師さんの給料はアメリカからドルで送られて来て、それを日本の銀行で円に換えていることを知った。
私のオヤジはランキンさんに話を付けて、その給料をアメリカに貯金してもらう代わりに、その金額を給料日に日本円で渡すという契約をした。
法律で言えば外国為替法違反である。
そのお金がアメリカに貯金されていたお陰で、私のニューヨーク滞在は割合と豊かであった。