けれども、寒い北海道では、ひと月前に済ましてしまう家庭が多いと聞きます。
私は、この日になると思い出す、あるエピソードがあるのです。
娘が3歳、息子が1歳の頃のある日、家事がひと段落ついたところで、ハッと気が付きました。
「今日は七五三だ!」と。
急いで身支度をした私は、息子をおんぶし、娘を自転車の荷台に乗せて、伊達神社へ向かって走り出しました。
せっせかせっせか自転車を漕いでいたら、腰に腕をしっかりと回した娘が、「おさんぽいくの?」と聞きました。
私は、「そうよ!神社まで自転車でお散歩~♪」と答えました。
軽く汗をかいたところで、ようやく伊達神社に到着しました。
すると、たぶんいないだろうな...と思っていた、七五三詣での家族が何組かいました。
どのお子さんも着物やスーツを着て、おすましをしていました。
親御さんもまた、お子さんに負けないほどのおめかしをしていたのです。
目ざとい娘は、「どうしてみんなきれいなおようふくをきているの?」と聞きました。
私は、「そうね。綺麗ね。みんなお写真撮るのね。」と、答えにならない返事をすると、娘の手を引いて、大きな鈴のところへ連れて行きました。
「今日はね、三歳のあなたが、これからもずっと元気で過ごせますようにって、神様にお願いに来たの。さあ、一緒に鈴を鳴らそうね♪」
こう言って、二人で綱を握ると力いっぱい振りました。
ガランガランと鳴る鈴の音に喜んだ娘は、何度も鳴らしたがりましたが、神様に怒られそうなのでほどほどにして、お賽銭を入れ拍手を二回に一礼をし、「この子がいつも元気でいますように♪」とお願いをしました。
「さあ公園行こう!」
「うん!」
はてさて、あの時あそこにいたご家族は、風のようにやってきて、風のように去っていった私達のことをどう見たかしら?
まさか、普段着に自転車で七五三詣でに来てたとは、きっと誰も思わなかったでしょうね。
確か帰り道にスーパーで、千歳飴だけは買ってあげたはず。
形じゃないよ。
気持ちの問題。
心のありようさ。
なんて、身勝手な観念を押し付けちゃったかなぁ...。
昨日ご来店の、ミルクの香りの可愛い赤ちゃんを抱きながら、あの日のことを思い出し、ふと不安になりました。
まあ、元気に育ってくれたからよし!ってことで...。
<付録写真>
留寿都の友達が、「これぞ蝦夷富士!」と、以前よりさらに雪が増えた、羊蹄山の写真を送ってくれました。
だいぶ下まで白くなってきました。
私の出稼ぎへの旅立ちが、いよいよ近くなってきたってことね。
